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3章:第三章 (12/13)

「あのさ、この際だからはっきり言いたいんだけど」

富美子は夕貴の目を真っ直ぐに捕らえた。

「私ね、ホストとか関係なく、1人の男として貴方が好きなの。

貴方と本気で付き合いたいと思ってる。

曖昧な関係は嫌だからはっきりさせたい。

この年で、夫を亡くして、このまま老いぼれて死んでいくだけだと思っていたけど、貴方は私の人生を豊かにしてくれたわ」

10秒ほど沈黙が起こった。

「気持ちは嬉しい。ありがとう。

でも今は付き合うとかはできないかな。

仕事に集中したいし」

富美子は喉の奥がキュッと締まるのを感じます。

「ホストを辞めた後は?」

「富美子のこと人としては好きだけど、付き合うとか、そういうのは違うかも知れない。もちろん感謝はしてる」

夕貴は太客の一人である富美子を失う覚悟で、はっきりと自分の心の内を話した。

感情的になった富美子はカクテルが半分以上入ったグラスをおもむろに掴んだ。

それを床に向かって投げつけようとした瞬間に理性が働き、再びテーブルに戻した。

「なんで抱いたのよ」

富美子の頬をボロボロと大粒の涙がつたっていく。

「好きでもないのに抱いたのね」

「最低な男だよね。本当にごめん」

「もういいわ。私、帰るから。さようなら」

「待って」

夕貴は富美子を追いかけるも、富美子は一人でタクシーに乗り込み、そのままマンションへ帰宅した。
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塀の向こう側で ©著者:えだまめ

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