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1章:1〜100 (2/10)

11、事務所スペースで昼食を食べながら、葵と一緒にお茶を飲んだときのことを思い出した。

目の前の椅子に彼女は座っていた。

千鳥格子のスーツを着て、ウェーブのかかった髪を垂らして、にっこりと笑って真一郎を見つめていた。


12、その言葉に真一郎は思わず吹き出した。


13、彼女はそう言うと、一礼して、ガレージを後にした。

慎一郎は工場の入り口近くまで彼女を送った。

去ってゆく後ろ姿を見つめながら、「桐生葵」と呟いた。


14、事務所スペースに戻ると、葵のカップが残っていた。

うっすらと口紅がついている。

それをそっと撫でると胸が妖しくときめいた。


15、慎一郎は笑って受け流そうとしたが、桐生はやはり、にこりともしなかった。

葵はカップを皿の上に置くと、強い口調で言った。


16、慎一郎は何と答えていいのかわからなかった。

葵は立ち上がって、深く頭を下げた。

真一郎も仕方なく立ち上がって、ぎこちなく一礼した。


17、黒川はその質問には答えず、黙ってタバコを吸った。

しばらく沈黙が続いたが、やがてぼそっと言った。

真一郎が頷くと、黒川はタバコを灰皿で揉み消し、「じゃあ、出るか」と腰を上げた。


18、真一郎の質問に、彼は虚をつかれたような顔をした。

そして自嘲気味の笑みを浮かべながら、「俺もまた世間の奴らと同じだよ」と言った。


19、少しの間、奇妙な沈黙があった。

真一郎は黒川の視線が自分の口元へ向かうかどうか注意したが、彼の目が真一郎の口に注がれることはなかった。

慎一郎は内心ほっとしつつ、これまで自分の寿命など考えたことがなかったことに気付いた。

こうして黒川と会話を交わして初めて、そのことを意識した。


20、黒川の言葉が毒のように自分の全身にまわりつつあるのを感じた。

彼の言葉が真実かどうかなんてわかりもしないのに、自分はそれを恐れてパティシエから逃げた。

彼の運命に関わることで自分の命が奪われたらと思うと、逃げずにはいられなかったのだ。

電車に乗ってる間も、後悔とも安堵ともつかない、何とも言えない気持ちがぐるぐると渦巻いていた。

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恋愛小説表現集 ©著者:小島 優子

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