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2章:合格判定D
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2章:合格判定D
いよいよヌードの時間。
広いリビングのほうが本番の試験会場に雰囲気が近いような気もするが、
ともかく生身の裸婦に慣れさせるために、一対一でお願いしますという両親の希望を容れて、
二階の少年の部屋に移動することにした。
なんと、そこにもイーゼルがあった。
そして額装された作品が床に置かれていた。
制服のブレザー姿の女子高生の肖像画。
彼女でしょ、と訊くと、素直に肯定した。
私は拍子抜けした。
ちゃんとモデルいるじゃないの。
プロに頼む必要ないじゃん。
そう思いながら、着ていたワンピースをさっと脱いだ。
モデルのたしなみとしてノーブラだから、私はあっという間にTバックのパンツだけになり、それも躊躇なく抜き去った。
(Tバックは先輩モデルの入れ知恵。プライベートでは絶対穿かない)
セミプロとはいえヌードモデルなんだから、これが仕事なんだけど──どう取り繕っても、初対面の女性がいきなり裸になったというシチュには変わりない。
驚かせたかな?
▽
だめだ。
私を見る焦点が定まってない。
リビングでの着衣の時と同じにしようと椅子を使ったポーズ。
両腕で乳首を、軽く組んだ両手で恥毛を、さりげなく隠して刺激を少なくしてみたんだけど、
何が見えるとか何が見えないとかは問題ではなく、一糸まとわぬ裸体になった女性が存在しているというだけで免疫がないらしい。
コンテが動かない。
こうなると、私も恥ずかしくなってくる。
モデルの仕事中の私は、真剣に描きたい人たちに真剣に応えていると自負している。
人に敬意を表すために服装を整えるように、私は全裸という正装で真剣な人に向き合ってきた。
だから、理由はどうあれ真剣に描いてもらえない以上、私だってプライドがゆらいでしまうのだ。
裸って、恥ずかしいな。
こんなこと考えるようでは、ヌードモデル失格だな。
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ヌードデッサンのある美大の入試 ©著者:きのした詩織
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