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13章:‡雨‡
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渓流館に戻った。
飛鳥は、点滴のお蔭か、普段通りだった。
お通夜が、1時間後に始まる。
これ迄のご葬儀は、部落の皆様方が参列したに留まったが、今夜は他からも、礼服姿の方々がやって来た。
将也君の母上の、ご実家の皆様も。
母上も、もう退院してた。
〔じゃ、これからはオメェが岡崎家を仕切るのか?〕
母上のお兄様のようだ。
〔んだな?
金の事も有るし、お義母さんじゃ解らねぇがら。
将也も足利で暮らすっで言うし〕
〔けんど、岡崎には相当の資産が有るんだべ?
オメェが独りで仕切るっちゅー事に、他の人は賛成なんけ?〕
将也君のお祖父様、つまり母上のお父上。
と言っても、未だ若そうだった。
お祖母様と、お兄様の奥方と。
5人は、広間の片隅に固まって座ってた。
〔ワザワザ運んで貰っぢまっで〕
マキちゃんのお祖父様と、岡崎家の他の小父様方も一緒に座る。
〔なんだが、娘でいいんべけ?
後から嫁入りして、岡崎の家を仕切るなんちゅー大役をコレが担うっで事らしいけんど、こんなに立派な男衆が何人も居るっでのに〕
と、何故かテルヨさんの父上が、口許を綻ばせてる。
〔だども、そいが決まりだがら!
将也は足利に行ぐっで言っでるし〕
将也君の母上のテルヨさんは意気揚々と、周りに言った。
不思議な光景だった。
今朝方最愛のご主人が亡くなったのだ。
病に伏しての結果でさえ、普通はショックだと思う。
でも、突然に亡くなった。
財産云々なんて、考える余裕もないと思う。
そんな事は、初七日でも過ぎてから、考える事なのでは?
身近な人を亡くす。
こんなに軽い気持ちでは居られない筈。
去年、父を亡くした。
母はもう、憔悴仕切って何も手に着かず。
そんな母を妹に預けて、私は家族としてやらなければいけない事を担った。
悲しむ暇もなかった。
でも、長年連れ添った伴侶を亡くしたのだ。
私とりかを残して。
母はずっと父の傍に居た。
時々お水を替えて、お線香を上げて、ずっと泣いてた。
でも、テルヨさんにはそんな素振りもなかった。
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