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あかねは立ち尽くしていた。
少ない荷物は通勤鞄に収まる程度だった。
社員証をセキュリティに返して外に出ると、油分のない女性が待ち構えていた。
『結局静かにやめてくんだ?』
麻友『疲れちゃったし。
この会社で特にしたい事もないし。』
『ふうん…』
麻友『色々と世話やいてくれてありがとうございます。』
『なんもしてないわよ。』
麻友『いいんです。』
『またどこかで会いましょう』
麻友『どこかで、ね。』
通りまで歩くと
間近でクラクションの音がした。
沢村『どこ行くんだ』
麻友『自宅ですけど』
沢村『もう帰宅か?』
麻友『まあ…そうですね。』
乗れ、と合図があり
する事もないし、素直に応じた。
麻友『車、珍しい』
沢村『そうだね。
いつもの場所でいい?』
麻友『あ、はい…。』
女性なら誰しもが憧れるホテルについた。
もちろんスイート
沢村『さっぱりした顔してるな。』
麻友『今日で退職したんです。』
沢村『えっ
』
麻友『退職したんです。』
沢村『いや、聞こえたけど、またなんで。』
麻友『色々と、ね。
私を気に入らない人がいたみたいです。仕方ないです。』
沢村『なんだそれ。』
麻友『私の愛人稼業、言いふらした人がいて。』
沢村『ああ。俺も名前上がった?』
麻友『とりあえずは出てません。』
沢村『これからどうする?』
麻友『しばらくはゆっくりしようかな。一応蓄えはありますから(笑)』
沢村『そうだろうけど…。
こんな時にあれだけど。
光太郎くんの事。』
麻友『見つかりました?』
沢村『一応生きてて、高校生だ。』
麻友『良かった…』
体の力が抜けた。
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なしじゃ生きられない ©著者:愛希
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