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46章:スクールカースト【地獄の業火】
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46章:スクールカースト【地獄の業火】
「お願い、やめて…
あなたも知ってるでしょ?
あの日、私の母が交通事故で急逝したって…
赤山さんだって、一緒に悲しんでくれたんだよ…」
「言い訳すんな!」
ヒステリックな甲高い声が天井まで響いて、掃除用具であるモップの先端が顔面に叩きつけられた。
目許に掃きだめが飛び散り、少女はドスンと背後に倒れ込む。
倒転の勢いで、後頭部が背後に立った女子生徒の足下に落ちたが、生徒は「キャッ」と、跳ねるように一歩退いただけで、それ以上の危害を加えることはしなかった。
鼻に強い衝撃が走ってほとばしり出た鮮血を手で抑え、咽び泣く少女の目許は埃で黒っぽく汚れている。
床に肘をついて、かろうじて肩を浮かせた少女の視界には、スカートを短くした主犯格とその仲間達の骨張った細い脚だけが見える。
去年の夏の日の放課後のことだ。
椅子や机が全て脇に避けられたくすんだ色の教室の真ん中で、ひとりの少女が複数人のクラスメイト達に円形に囲まれていた。
彼女達のグループで言う、いわゆる集団リンチってやつだ。
終始パッシングのシャワーを浴びせるだけの、ルールに背いた者に対する恒例の断罪だったはずが、この日は行き過ぎた行動が出てしまっていた。
「ねぇ、やめなよ、雪絵だって仕方ないって許してくれたんでしょう。
ほら、鼻血出してるじゃない。」
視界の片隅で、ひとりの女子の白いハイソックスが前進したのが見えた。
それはリーダー格の女子の真横に並んだ。
すでに鮮血は手の甲まで滲み出ているのだろう。
二人の上履きが互いに向き合ったのを合図に、少女を唯一擁護してくれた反対派と主犯格の女子との対立にゴングが鳴った。
少女はそのクラスメイトが誰なのか、声やちょっとした歩き方の癖ですぐにわかった。
でもそれ以上振り仰ぐことができない。
冷酷な目と憐れむような目、同時に二つの目に見下ろされている視線をひしひしと感じて、抗うことのできない重圧感に頭が思うように動いてくれなかった。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子
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