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44章:おしまいDEATH
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44章:おしまいDEATH
朝のホームルームが開けて、二年A組の教室に蜂の巣をつついたような喧騒が立ち上がる。
あれやこれやとお喋りにせわしい男女が各自スクールバックを持参して、文理にグループ分けされたそれぞれの教室に散っていく。
早応大慶田高校では、二学年にもなると授業の大半が学科ごとの研究室で行われるため、ホームルームだけがクラスという単位の意味を成すだけとなる。
新学期が始まって二日後ということもあり、初日のオリエンテーションを除いて今日が初めての教室移動だ。
新垣ゆいなは、クラスメイトの女子数人の笑い声に囲まれて、日本史の授業が行われる社会科研究室へと向かっていた。
一学年の頃のクラス単位の授業も、大好きなクラスメイト達といつも一緒にいられて充実していたけれど、ほとんど顔も知らない他のクラスも交えた教室にも期待を胸に膨らましていた。
というのは建前で、本年度から二学年文1の日本史を担当するのが、入学当初から憧れていた若手の男性教師ということもあり、教室が近づくにつれて鼓動が早鐘を打ち始めて、頬がかあっと熱くなる。
はずだった。
ゆいなと仲の良い友人は皆、男性教師に対する彼女の思慕をわかっていても誰も冷やかすことはしなかったが、二学年になって初めて彼の授業を受けられると知ってやいやいと突ついてきた。
「ゆいな、良かったね、これから一年ずっと小栗先生と一緒にいられるよぅ〜!」
一人の女子生徒が二ヒヒと口角をUの字に曲げると、ゆいなは、
「授業だけでしょ!」
と唇を尖らせた。
そんな拗ねた顔も可愛いと、他のみんなが囃し立てる。
ベージュのブレザーをかっちり着込んで歩くゆいなに、すれ違う男子生徒達が熱い視線を向けてくる。
流動的にサラサラと蠢く腰までのストレートヘアーは純真無垢な黒髪で、前髪は真ん中よりやや右に分けていた。
黒目がちな瞳は大きく、澄んだ輝きを湛えている。
すっと流れる鼻筋に、ちんまりと愛らしいピンクの唇、細長い眉毛もいたずらに加工されることなく、最低限の手入れで整えている。
校則をきちんと守っているらしく、赤チェックのプリーツは膝小僧が覗くぐらいのスカート丈で派手さはないが、逆にその素っ気なさが清々しい魅力を引き出していた。
笑いさざめくグループの中で、ゆいはな時折暗鬱な表情を見せる。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子
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