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39章:白百合と薔薇
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39章:白百合と薔薇
昇降口からスポーツの棟へと続く一階の渡り廊下脇の階段を三階まで上がると、資料室や備品管理庫など普段頻繁に使われることのない部屋が深閑と並んでいる。
その中のひとつに、一部の素行の悪い生徒や職員達から多目的空間と呼ばれている部屋がある。
それが視聴覚室だ。
映像資料をもとに様々な分野での視聴覚教育が行われていたが、教育現場でのIT活性化に伴い、各教室ごとにプロジェクター方式の電子黒板と液晶ディスプレイが導入されたため、現在ではほとんど使われることはなくなった。
掲げられっぱなしの大型スクリーンは旧式で、まれに設備の故障など、緊急の際には使用されている。
室内はひとつの教室ほどの広さで、いつでも授業できるよう、スクリーン手前には質素な折り畳みテーブルとパイプ椅子が縦横に並ぶ。
ひと気のない廊下に窓のない密閉空間、さらに防音構造も充実していて、清掃もしっかりとされているので、男女のまぐわいにはもってこいの場所なのだ。
当校に赴任したばかりのアラサー女教師小島優子は、むしろこんなパンドラの箱のような空間でコソコソとコトを行うより、ひと目がつきそうで見つかりにくい場所を好む。
例えば授業中の階段の踊り場、屋上、いやいや、特進クラスの生徒が集う中、教室内で堂々と男子生徒にフェラチオしてしまうくらいだから、情事には畏怖嫌厭(いふけんえん)もない。
その優子が今回、別の目的でこの秘密室を利用することになる。
優子を煉獄に陥れ、恥(ち)の池に突き落とした女を折檻するためだ。
女は淑女のような、ふんわりと柔らかな雰囲気をまとって優子に近づいてきた。
しかし内側は凄まじい我欲と妄執に満ち溢れていたのだ。
その女が昨日、ついに化けの皮を剥いだ。
白昼堂々と三学年の廊下で優子に襲いかかり、秘唇の深淵まで指を貫いて蜜汁をしぶかせたのだ。
元教え子で妹のような存在でもあるゆかりにまでその羞恥を嘲(あざけ)られ、心に苦い痛恨が湧いてくる。
あの女だけは絶対に許せない。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子
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