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38章:ヘラクレス (1/13)

38章:ヘラクレス

太陽は音もなく静かに昇り、白壁の校舎が眩い光に包まれた。

前日と同じように、雲ひとつない上天気だ。

東の空が明るくなっても、朝の草創期を迎えた校舎は、まだ音もなく佇んでいる。

早朝の早応大学付属慶田高校は、ひとりの男によって眠い目をこすり、やがて朝練のために登校する運動部員達によって目を覚ます。

学園の一日を始動させるのは、とある高齢の男性。

グレーの作業着に着替えて花壇の世話から始めるのが日課だ。

土壌に並ぶ花々は、冷たい汗をかいたように朝露にびっしりと濡れて、キラキラとなんとも幻想的だ。

植物たちの養分を横取りされぬよう、細かい雑草を毟り取り、ゴミ袋に放り込む。

ジョロで水を差すときは、愛情を込めて均等に。

こうして学園の環境を整備し、毎日温かい笑顔で生徒を見守るこの男性は、職歴30年を誇る用務員のおじさんだ。

彼の名は『志村けん壱』、今年に古稀を迎える老境だが、仕事に対する情熱はまだまだ若い者には負けていない。

折悪しく、情熱に反して体力は衰えていく一方で、今年いっぱいの円満退職を予定しているらしい。

頭髪は薄く、真白く染まった多毛の眉と、老眼鏡の奥に覗く厚ぼったい瞼の下の繊細な眼はハの字に垂れていて、真顔だとどこか物憂げに見えてしまう。

そのせいか、ひとり黙々と仕事に励むその背中は哀愁が漂っているようで、声をかけづらいときもしばしばだ。

仕事を離れれば人が変わったようにオヤジギャグを連発し、見たまんまを面白いと感じさせる芸で笑わせてくれるので、生徒や職員からの人気も高い。

志村が昇降口前を掃こうと、花壇脇にある物置の引き戸を開けたとき、ひょっこり現れた猫の気配を背中に感じた。

チャコールグレーのさらさらとした雑種で、誰かに飼われているのだろう、首輪もついていて毛並みも清潔だ。

志村は腰を下ろし、垂れた目尻をさらに深く優しげに下げて、両手を伸ばす。


「ほら、チャーリー、こちにおいで」


猫はすぐにすり寄り、彼の腕に抱かれて抱擁される。

志村は愛のある優しい人柄で、人に対する気遣いも立派だ。

その優しさを汲み取ったのだろう、この子は毎日のようにここに現れ、志村に癒しを求めるようになったのだ。

志村もお気に入りのようで、勝手に『チャーリー』と名付けて可愛がっている。

猫を抱きながら片手に竹ボウキを握りしめ、歩き出そうとしたその時、いきなり「おはようございます」と澄んだ声に足を止められた。

見ると、いかにも違う学校の制服を着た女子高生が立っていたが、なんだか様子がおかしい。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子

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