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31章:悪魔の鉄槌(ルシファーズ ハンマー)
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31章:悪魔の鉄槌(ルシファーズ ハンマー)
ハダンと扉が開く音が鳴る。
フロアーでバイクの話に盛り上がっていた紫の特攻服の集団が、一瞬眉をひそめて視線を集める。
気が急ぐように、淡い照明の空間に陽射しをかざしたのは雪絵だ。
昨夜の騒動から普通の女子高生に戻り、学校では午後の授業が行われているだろう昼日中の時間にこんなとこに来るなんて、只事ではない。
彼女は相当慌てたのか、ゼイゼイとつっかえそうに息をしている。
昨晩と変わらない、太腿の付け根あたりまで美脚を丸出しにした超ミニスカートの制服が、シルエットとして浮き上がる。
が、彼女の背後に差し掛かる斜陽のせいで、表情が陰になって見えない。
「緋咲ぃ〜」 思い詰めたような声音で中へ入ってくるやいなや、今にも泣き出しそうな物憂げな表情が浮かんできた。
ここは龍雲丸のアジト「バー デモンズ」、隅にはジュークボックスが配置され、カウンター前にはアルファベットのネオンが灯る、割とお洒落なアーリーアメリカン風なバーだ。
丸椅子が並んだカウンターでひとり、グラスになみなみと注がれたジンジャーエールに口をつけていた緋咲が、「姐さん、どうしたんすか?」と立ち上がる。
彼女は緋咲を目掛けて闊歩し、その様子をカシラの三島弥彦と特隊のジゴローらが睨むような眼差しを雪絵に流している。
「川口が…川口が…
川口が裏切ったんだよぅ〜〜」
爆発するように言葉尻が上擦った。
瞳の奥がユラユラと揺れている。
「なんだと?」 緋咲を含む全員が、ぎょろりと鋭い眼力を備えた。
「どうゆうことですか?
あいつらとは和議を結んだばかりじゃねぇっすか?」
緋咲が怪訝な顔で訊ねると、全員が固まるように寄ってきた。
「龍馬に、龍馬に付くから緋咲とは組めないってラインが来て、問い詰めたら、あんたも龍馬様のサブにつかないかって…それって私にリーダーを降りろってことで…
それからそれから…」
ウェリントン系サングラスの向こうに、眉間に深く皺を刻んだ緋咲の険しい視線が見えた。
雪絵がしどろもどろに喋るのも無理はない。
川口達から龍馬の洗脳を解くために木戸と戦い、随分と痛い目に合わされたあげくに勝利を掴んだのは雪絵本人だ。
これで緋咲らと組めば鬼に金棒な展開となるはずだった。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子
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