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28章:ギャングの女ヘッド参上 最終章
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28章:ギャングの女ヘッド参上 最終章
思っていた通り、人物が人力車をカラカラと引いて歩みを進めているのだが、漁火だと思っていたのは、車両を舐めるように囲っていた人魂のような燃焼だった。
あれは地獄絵図か何かで見た火の車だ。
もうひとつ奇妙なことが。
火車の先頭を歩く人間の頭には、牛の耳のようなものが付いている。
「や、ヤバイ!」 木戸はすぐにその場を離れようとしたが、金縛りにあったように全身が固まって身動きがとれない。
火車が接近するにつれて、ようやく人物像が火の玉に照らされて浮かび上がってきた。
木戸は我が眼を疑った。
人だと思っていたものは、牛がそのまま人間のように立ち上がった姿をしている。
手足は人間の物で指も五本ある。
服らしきものは一枚も着ていない。
細身だが筋肉質の身体で、獣のような体毛が全身を覆っている。
牛の獣人は木戸を目の前にすると、ピタリと足を止めた。
「木戸孝允だな。
迎えに来たぞ。 さぁ、乗れ!」
獣人は背後の火車を顎で差した。
「どこへ行くんだ?」
身体は動かないが、声は出せるようだ。
木戸が訊ねると、獣人は「地獄だよ。」と太い声で言った。
木戸は動きを封じられたため、表情ひとつ変えることすら出来ない。
「お前は息絶えた瞬間から、地獄行きが決まっている。
お前のような極悪人は閻魔大王の裁きを受けるまでもない。
さぁ、これから金縛りを解いてやるから、これに乗れ!
逃げようとしても無駄だからな。」
木戸はふと思い出した。
さっき拾った石の女の顔。
確か、2年前、夜道を一人歩きしていた大学生の女を仲間と無理矢理連れ去り、山中で強姦を重ねた女によく似ていた。
用が済んでその場に置き去りにされた女は、あの後精神的苦痛を訴えて鬱病になり、数日後自家用車で鍛錬自殺したと聞いた。
鍛錬自殺は最も苦しい死に方のひとつで、その顔は苦痛に歪むと聞いたことがある。
あの顔は、その時のデスマスクだ。
それを偶然に、いや、運命的に拾い上げたということなのか?
「強姦を繰り返し、人まで殺めた罪は重い。
俗界では逃れても、冥界に入ってしまえば絶対に逃げることは出来ない。」
言葉の途中で身体が動くようになると、すぐに腕を掴まれた。
「冗談じゃねえ!」激しく抵抗したが、獣人の力は木戸のようなムキムキした体型の男でも、腕一本で簡単に持ち上げるほどの怪力だった。
木戸は赤子の手を捻るような感じで、いとも簡単に打ち負かされ、火車の座席に身を放り投げられた。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子
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