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25章:ギャングの女ヘッド参上 ②
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25章:ギャングの女ヘッド参上 ②
【ぼいすれすすくりーみんぐ】
「おい! そろそろいいだろ。」
川口がもう一度雪絵の肩口を叩く。
すると死んだはずの雪絵がムクッと身体を起こしはじめたのだ。
蜘蛛の巣のような流血が頬に散らばり、それはまるでゾンビの起き上がるシーンそのものだった。
「ぎゃあ〜!」 雪絵を取り囲む三人の男達が戦慄の声を振り立てた。
ニットキャップの男はあたふたとよじれ、左へ引っ張られた体がスライドドアにぶつかった。
運転手の中岡は落ち着き払っていて、ブレのない運転をキープしながらクスっと笑った。
雪絵の顔の下半分は鼻血で染まっている。
雪絵はスマホが入っていたポケットからポケットティッシュを取り出し、鼻血を拭き取ると、グシャグシャに丸めてニットキャップの男目掛けて投げつけた。
男はそれを鼻で食らったが、間近で思いっきり投げられたことで蚊が刺すような微々たる接触が伝わり、思わず「痛!」と口走った。
「あんた許さないよ。」
雪絵の目にも男の手の中にあるナイフは見えているし、さっきまでの騒動も勿論耳にしている。
男が川口らを敵に回したことで、形成逆転を狙うかのように、雪絵は苛立たしげに眉を寄せた。
猛烈な反抗心が沸き上がり、彼女なりの復讐を考えているのが目に取れる。
「あんた、やっぱり面白ぇなぁ。」
川口が得意げに唇の端を持ち上げた。
迫真の演技で雪絵が死んだふりをしていたのを、一目散に見破ったのは川口だった。
多くの修羅場をくぐり抜け、人の死までも経験してきた川口だからこそ、屍と思われる物体の機微ですぐに判断出来たのだ。
それを見抜けなかったばかりに、自分のことしか考えず、血迷ってしまった下の者に対して、言いようのない怒りを覚えた。
ニットキャップの男が本能に突き動かされてナイフを上げたこともしかり、中岡がコンクリート漬けにすると提案したことも含めて、すべてが怒りとして跳ね返ってくる。
川口はこういった犯罪まがいのことが本当は大嫌いだった。
雪絵が男に復讐心を仰いだ以上、あとはどうやって彼女がこの男を仕留めるのか、お手並み拝見とする。
雪絵に睨まれたニットキャップの男は、黒目が微かに震え、痩せた咽喉もとの皮膚が呼吸に合わせて蠢いている。
性の対象としか見ていなかった雪絵を、川口以上に怖がっているようにも見えた。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子
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