2章:初づくし (3/17)

ボーリング、カラオケ、食事、夜景。
デートのお手本みたいなコースを4人で回って、一日中、楽しんだ。

最後に、これまた伊藤兄妹に背中を押され、互いの電話番号を交換して、御開きとなった。

モテる男なら、ここからグイグイ攻勢をかけていくのだろうが、おいらにはその勇気はなかった。

これまで、何度告白しても惨敗。勿論、相手から告白なんかされたことのないおいらは、すっかり消極的になっていた。

あんな可愛くて愛想のいい娘とこんなおいらが付き合えるはずもない。明るく振舞ってくれたのだって、きっと紹介してくれた伊藤兄妹に気を使ってただけなんだ。

そんな卑屈な発想が頭で膨らみ、一人歩きをしていた。

おいらはまた、これまでと変わらない日常生活に戻った。

とはいいつつもやはり、ケイコのことは気になる。かと言って、怖くて連絡もできない。考え抜いたおいらは、探りを入れるべく、伊藤兄妹の家を訪ねた。

伊藤兄妹はいつもと変わらず、招き入れてくれた。
リビングに入ると妹が開口一番、
「なんでケイコに連絡しないの⁈」
と、半ばキレ気味に言い寄ってきた。