8章:東京事変 (2/29)

「ね？澪ちゃん、今日の夜暇？」

「先輩、なんですか？そのニヤニヤ顔。なんか企んでるのバレバレなんですけど…」


平凡な会社に就職し、仕事にも慣れてきた頃、可愛がってくれている先輩に誘われた。


「澪ちゃん、ホスト行った事ある？」

「ないですよ…。」


あからさまに嫌そうな顔をしてみたが、もちろん先輩には通じない。


「あたしね、最近お気に入りの担当ができてね❤一緒に行かない？」

「高いんじゃないんですか？ホストって…。」

「ううん！初回は安いから大丈夫！社会勉強だと思って、ね？先輩を助けると思って！」


まさか自分がホストクラブに行く事になるなんて。
さすが東京…何が起こるかわからない。


「なんてお店ですか？」

「ん？店名？アイルだよ。」


当時、歌舞伎町の規模なんて知らなかったあたしは、綾哉の働いてる店じゃないと分かりホッとしていた。