6章:ambiguous (3/39)

「あいつチャラいからね。他にもいっぱい女がいるんだよ？」

「澪ちゃん、実は別れない方が良かったんじゃ…。」

「それは言わないで、花ちゃん。」


綾哉の居ない休み時間は本当に静かだ。


「そう言えば桐谷くんは？」

「さぁ？」

「桐谷くん、一年にも人気あるみたいだからさー、ライバルは美嘉さんだけじゃないかもよー？」


ポケットからグミを取り出した花ちゃんは、あたしの掌にもグミを乗せてくれた。


花ちゃんはそう言ったけど、美嘉さんだけは特別なんだ。


なんだろう。
二人が過ごしてきた時間？それとも…


あたしには入り込めない。
美嘉さんが特別な存在に見えるのは、きっと勘違いなんかじゃない。


何味だか分からない。
曖昧な酸味が口の中に広がった。