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11章:# 11
その日の少年は深い眠りにつく。いつもと比べられないほど、深い眠りにつく。
少年は父と母に感謝する。いつも少年を見守る力が、父と母の眼差しであると気がつく。
その眠りの奥深くには、少年が学校で不安に過ごしていた、辛い記憶が存在する。
その辛い時期をのり越えるために、少年は眠りにつく時には、あたたかな存在を感じていた。
なにか大きな存在に守られて、心にゆとりを与えてくれていると感じていた。
その頃には、まだわからない、やさしくて大きな存在。
あたたかな光に包まれながら、それを理解できずにいた頃、少年は寂漠とした日々を過ごしていた。
その光が導いてくれたかのように、少年は傷みの伴う時間を、いつしか通り過ぎていた。
あの頃に気づくことができなかった、少年を包み込む温かな存在。
少年は眠りにつきながら感謝する。あたたかく、そして柔らかな光。それに包まれて、少年の不安は和らいでいく。身近なところに存在した、優しく少年を見守る人々。
いつしか少年はクラスメイトにも感謝していた。少年の至らないところを気づかせてくれた人。そして少年が変わることを信じてくれた人。彼らは少年が心を開くまで、ひたすら待ち続けていたのかもしれない。どのような形であるにしろ、少年の足りないことを気づかせる力が、そこには存在したと言える。そして少年は、その力に導かれて、大切なものを手にすることができた。
あまりにも曖昧で、漠然としているが、すべてのことに感謝していた。感謝の心が体に揺らぎを与えていた。
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少年日和 ©著者:香澄怜良
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