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5章:# 5 (2/2)



(おびえなくて良いから、ミルクを飲みに追いで!)


少年は胸のうちでつぶやきながら、猫を遠めに眺めていた。

それでも猫は近づかなかった。

かなり警戒しているのかもしれない。

そのように感じた少年は、少しだけ下がった。


(怖がることはないから、ミルクを飲みに追いで!)


胸のうちでつぶやきながら、やさしく少年は猫を見つめた。

それは誰かにいたわってほしい、少年の気持ちに似かよっていた。

そうすると猫は少しだけ和らいだ。

ミルクの入ったプレートに近づきながら、少年のことも見つめていた。

まもなく警戒をほどいた猫は、プレートのミルクを舐め始めた。

猫は舌を出して、ミルクを舐めた。

ペロペロと美味しそうにミルクを舐めていた。

それを見つめる少年は満面の笑みを浮かべた。

鴨の親子に投げ入れたパンも、まだ僅かに残っていた。

そのパンをミルクにつけて猫へ近づけると、匂いを嗅ぐように鼻をすり寄せた。

とくに危険を感じることもないので、ミルクに浸したパン切れを猫は美味しそうに口にした。

ささやかな一時だが、少年は幸せを味わっていた。

学校では味わえない、幸せを存分に味わっていた。

猫はミルクを飲み終えると、お礼をするかのように首を下げて、その場を静かに去っていった。

向こうにあるのは児童会館。

その脇に猫の隠れ家があるのかもしれない。

少年は猫の姿が見えなくなるまで見送った。

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少年日和 ©著者:香澄怜良

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