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10章:‡南の島の風‡ (3/17)

琉斗が全部話すと、大将が笑い出した。

大将は、ふと翔を見る。

『あれ?これ仏壇だったの?

仏様が居たのか……

手ぶらで申し訳ないが、お線香だけ、上げさせて貰っていいかい?』

と言って、翔の前に座った。

『ええ、ありがとうございます』

と凪が言うと、大将はお線香を1本取って、ろうそくの火を移した。

ミルフィーも横で正座してる。

暫し手を合わせて、顔を上げると

『まだ、若い人のようだけど?』

と訊いた。

『ええ、兄なんです』

と凪が言うと

『そうだったの……

立派なご戒名だね』

と言った。

翔の戒名は《信士》ではなくては《居士》

それで、そんな風に言われる。

でも、正直私には、何がどう違うのか、全く解ってなかった。

『珈琲ですけど、どうぞ』

と、テーブルにカップを置いた。

『あ、いや構わないで』

と言って、大将がテーブルの周りに点在するクッションに座った。

『お菓子食べて下さい』

と、言うと

『じゃ、せっかくだから戴くよ』

と言って、珈琲にミルクを落とした。

『実はさ、金子さんの並びの、竹下さんが、入院したんだよ』

と大将が切り出した。

『竹下さんって、あの、間口の広いお宅ですよね?』

と訊くと

『そうなんだ。

昔は何か商売してたみてーだから。

今は、年寄りが2人で暮らしてて、旦那は老人会の会長をやってるんだ。

その、余り言えねーが、金子さんが、毎日のように注文を訊きに言ってたみてーで、それで、2人で昼を喰いに行ったんだ。

もう一昨々日になる。

で、喰って帰ってきたら、旦那が吐き気が止まらなくなっちまって、隣の内藤さんが、日赤に連れてったんだ』

『食中毒!?』

と思わず訊いた。

『いや、そこ迄はいかなかったみてーだけど、今も入院してる』

凪も琉斗も私も、顔を見合わせる。

『何を食べたんですか?』

と凪が訊く。

『豚カツだそうだ』

『あれじゃ、お腹壊すよ〜

あんな使い回しの油使ってるんだもん』

と琉斗が呟く。

『だろ?

とにかく酷ぇもんだ。

あんなの喰ったら、腹に来て当然だ』

『じゃ、お見舞いした方がいいですよね?

ご近所なんだし』

と凪が言った。

『ま、それもそうなんだが、老人会の人達が、怒ってな。

金子食堂を潰してやる!

って始まってるんだ』
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†ふぁみりぃ† ©著者:Jude(ユダ)

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