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5章:†翔の引っ越し†
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接客業は好きだが、やはり私の本業はこっち。
そろそろ発表会の準備をしなくてはならない。
去年、父の事が有り、発表会が出来なかった。
先生に依っては、発表会をされない方も居たが、私は、発表会はとても大切だと思ってる。
勿論、色々な面で、生徒側にも負担を掛ける事にはなるが、私自身振り返って、あの、緊張感と、キラキラ感は、とても大切な思い出になってる。
人前で演奏するのだから、と、何時もの何倍も練習する。
それが、ステップアップになる。
グレード試験も勿論大切だが、同じ緊張感でも全然違う。
みんなに拍手を貰って、その一瞬だけ、スターになれる。
独りでステージに立つ。
誰も頼れない。
無事に演奏を終えて、温かい拍手を貰った時の、あの、大きな達成感を経験させたかった。
今年は店と二足の草鞋になるので、早めに準備する必要が有る。
出来れば、クリスマスにしたかった。
また、性懲りもなく、ポインセチアを配るつもりだ。
『グリッシェンドにばかり集中し過ぎちゃってるよ。
だから、下鍵盤に行くのが遅くなるのよ。
グリッシェンドは、流すだけ。
それと、カウンターライン、途切れさせないで。
ここで、指を変えないと。
まぁ、足が忙しいからね』
と笑う。
『熱い!』
と生徒が言う。
もう直ぐ、講師の資格取得に挑戦する、田辺真純。
弾く曲もかなり難しい。
エレクトーンは、手足をフル活用する。
速いテンポの曲となると、もう、いちいち考えて居られなくなる。
課題曲と自由曲。
何曲も用意して、でも試験で弾くのはそれぞれ一曲ずつ。
しかも、せっかく練習して仕上げたのに、試験官には途中迄しか聴いて貰えなかったりする。
『指使い直して来て。
それと、録音して聴いてみてね』
『うん、そうする。
でもさ、私間に合うかなぁ?』
『まだ、2ヶ月近く有るんだから、大丈夫だよ。
課題曲は大体出来上がってるんだし』
『頑張る!
来週と再来週は、上村さんでしょ?』
『うん、ごめんね』
『ううん、あの人の演奏、凄く格好いいんだもん!
久々〜!
また、弾いて貰お♪
じゃ、ありがとうございました!』
真純は以前、京香とレッスン日が一緒だった。
真純の次が京香だったのだが、レッスンの後、京香の演奏をよく聴いていた。
レッスン室クローズ。
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