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1章:†編集前記†
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四十九日の法要が済むと、突然、母が言った。
『ママは、りかの所へ引っ越しする』
つまり、家を私に預ける、と言うのだ。
訊けば、父の居なくなったこの家で、老後を迎えたくない、と言うのだ。
挙げ句、学校も退職してしまった。
母の行動の速さは定評が有る。
ワンルームで一人暮らしをしていた妹を、サッサと広い部屋に引っ越しをさせて、父の仏壇共々、引っ越してしまったのだ。
母に言わせると、足腰が丈夫な内に、東京の暮らしに慣れたいと。
余りにも急な事で、私も戸惑ったが、でも行ってしまった。
まぁ、家はもう支払い済みだし、母も、頻繁に戻って来るとの殊なので、私は止める事も無く、引っ越しを手伝った。
父の仏壇もない、北城台の家。
仕事場が此処だし、一人で1ヶ月程暮らしていた。
父を亡くしたのは勿論ショックだったが、でも、病床で苦しみ抜いていた父を思うと、不謹慎ながらも、ホッとした気分だった。
葬儀を執り行ったのは、喪主で在る母だったが、看病で疲れ果てた母の代わりに、やるべき事は沢山有ったし、悲しんでばかりも居られなかった。
そして、本当の意味で、一人になった。
でも、寂しいよりも、自由になった、と言う気持ちの方が大きかった。
夕ご飯は、凪の店。
その時々で手伝ったりもした。
みんなと一緒にお夜食を戴いてると、以前と何も変わらない、そんな気持ちになれた。
でも、北城台の実家に帰ると、やはり落ち着かなかった。
4人家族として建てた家。
決して大きな家ではなかったが、一人では大き過ぎた。
一階でお風呂に入る。
真っ暗なキッチンに行って、飲み物を取る。
また、灯りを消して二階の自分の部屋に行く。
何となく不気味になって来る。
老後を此処で過ごしたくない、と言った母の気持ちが、充分過ぎる程解った。
そんな折り、ちょっとしたサプライズが舞い込んで来た。
その事については、また、改めて語らせて頂きたい。
スカイラインからの、その後の私は、父を亡くす、と言う大きな体験をしていた。
父は、平成になった時に、旅立って行った。
翔も、平成を迎えなかった。
平成になったからと言って、何が変わるワケでもなかったが、私の中では、大きな時代が過ぎたような、そんな感覚だった。
因みに、翔の仏壇は、今、蓮のマンションに在った。
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