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6章:上陸
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あれは、本当に『トーア』か、それとも…
「俺、あの真ん中の子呼びたいんだけど。てか何、そのダウンタイムって?」
彼が敬語を使ったことはここ数年ない。
夜が長い人間は、服や靴をチェックするまでもなく、オーラでひとを見る。
金を持っているか、
利用できる奴なのか、
何を生業としているのか。
そして春希がこのような店でぞんざいな扱いを受けたことは一度もなかった。
「愛ちゃんはただいま、指名が重なっておりまして少々お待ちいただくことになりますが…」
「ああ、別にいいよ、待つよ。
誰かヘルプ付くんだろ?かわいー子つけろよ、お前」
春希としてもいつまでもこうして飲みあるいている訳にはいかない。ここで営業のひとつもして、客をつかまえておけば、仮に当てが外れたとしてもわざわざ金を払って来た甲斐があるというものだ。
「もちろんです。ダウンタイム、ご覧になりますか?まだセット料金は発生いたしませんので。」
黒服が初めてにやっと笑って2階へ続くエレベーターの方を指す。
「おう。そうこなきゃ!」
春希はこれから始まる夜−そう、それは彼の時間であった−に心浮かせて黒服と共にエレベーターへ向かった。
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生まれ変わりの詩(うた) ©著者:薫
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