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7章:男の楽園 (6/10)

やられっぱなしでは、済まさない。

悪魔の微笑み、と夢香がたとえた―自分でその威力を最も知っている微笑を浮かべて春季は七海を正面から見つめた。

七海のきつい瞳が一瞬丸くなり、そして柔らかくなる。その隙を春季は見逃さない。

「行きたいな、七海チャンとVIPルーム。もういい加減、指名なんてどうでもいいよ」

「あなた、いつか女に刺されて死にそうな顔、してるわね。あたしを陥しても、何も出ないわよ?…お給料のシステムは言っちゃいけない事になってるんだけど、」

「お客さんがVIPで遣ったお金は、そのまま現金で女のコの手取りになるの」

ボーイがグラスを運んで来たので一瞬口をつぐんだ七海は言った。

「だから、VIP料金の15分8千円なんて、あってもないのと同じよ。それでもサラリーマンには、充分いい値段だと思うけど。ほとんどのコが、ヤッてるわ…幾らで売れるかの、差こそあれね」

彼女は自分の事も『愛』の事も除外せず、さらりと言って肩をすくめた。

「仕方ないわよ、普通の接客がしたいコは、クラブへゆくわ。面接に通らないコはそのへんの風俗に、もっと安定したいコも、そうね。
今ここに居るのは、自分の値段に自信があるか、またはなにか訳有りか。まあ、正直あたしはどっちでもないんだけど、もう長いから、なんとなく今からほかへ移るのもねえ」

「ここ、どのくらいなの?」

「VIPができる前から居るわ。もう、5年くらいかな」

「ヘルプのコとも、『VIP』に行っていいのか?」

「お客様の自由よ。それに、お姫様は下へ行ったら、1時間は戻ってこないわよ」

そして七海は春季の耳元へ口を寄せてささやいた。

「今日はさっきもう沢山稼いだから、春季クンにはサービスしてあげる」
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生まれ変わりの詩(うた) ©著者:薫

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