16章:貞淑と淫乱 (2/9)

帰宅した主人を玄関で迎え、
スーツを脱がせて部屋着を渡します。

バスタブに湯がたまる間に、熱い日本茶かコーヒーを差し出します。

主人がお風呂に入ると、脱衣室にバスタオルと下着を用意します。

お風呂の時間に予め下拵(ごしら)えをしていた夕飯を手際よく仕上げ、
主人の飲みたいアルコールと共に
食卓に並べます。

私達は向かい合って食事をします。

私は、主人の話に耳を傾け
頷いたり小さく笑ったりします。

主人は寛ぎ、
私は尽くす...。

私は貞淑な妻であり、
いつも控え目で、角の無い表情で過ごします。

主人がいつも平和な気持ちになれる家庭を、

そんな心身安らぐ空間を、
然程苦労せず演出しています。


愛して、尊敬していますから、
苦になんかなりません。