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2章:コミュニケーション
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(ピンポーン)
『はい』
『あ、夜分遅くに申し訳ありません。
この前はありがとうございました。
日野コーポレーションの田中です。
ご主人は戻られてますか?』
『ちょっと待って下さい?』
『はいっ!よろしくお願いします』
インターホンから奥さんの声がして、少々の間が空く。
腕時計を見ている課長につられて、つい自分も時間を確認する。
もう22時前だ。
やがてガチャリと玄関扉が開き、中から学さんが鬱陶しそうに顔を出す。
『あ、学さん。ご無沙汰しています。
奥さんからこのぐらいの時間に帰られるとお伺いしたものですから…』
『…ちょっと遅いですね。
疲れてるんですが』
『ですよね…ほんと申し訳ありません…失礼は承知ですが、どうしても一度お話させて頂きたくて…今日はご紹介させて頂きたい者がおりまして、こちらは課長の中村といいます』
『どうも、初めまして。
紹介に預かりました中村と申します』
課長は用意していた名刺を素早く切る。
『いつもうちの田中が通わせて頂いてる様でお世話になっております』
『いえ、普段は家内と話をされてるんでしょうが』
『はい!奥様から事情はかねがね伺っております』
『話ぐらい、そろそろ聞いてあげればって言われては居るんですがね、要は群馬の実家の件でしょ?いくら良い提案されても、ウチは自己資金がないから事業なんて無理だよ』
『そうなんですねぇ』
ここからは課長任せの流れだ。
バトンタッチ。
俺は下がって話を聞くだけ。
『失礼、私も田中から色々話を伺っておりまして』
『ええ、だから来たんでしょ?
上司を連れて来られるとねぇ、
こちらとしてもねぇ、ちょっと参っちゃうよねぇ』
『ハハハ…ですよねぇ。
非常に申し訳ない。
ちなみにあと三年ほどで学さんご自身も定年になると…』
『ええ、まぁ』
『現在30ほどになる息子さんご夫婦は東京で家を買われて?』
『はい』
『公務員のお仕事をなされてるんでしたよね』
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