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2章:花嫁の左手
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「そうだなぁ……月並みな答えだけど、優しいし、何より女性が働くことを応援してくれるのよ。家事も分担だし、尊敬できるし……」
「わぁ、そうなんですね。いいなぁ……」
「決め手は……うん、このひとの子どもを産みたいって思ったことかな。まだ産んでないけど」
「そうですよねぇ。女性が働くにはまだまだ制度が整ってないですよね……私も、そういう方と知り合いたいって思ってます」
ほんの、何気ない女子トークであり、深い意味も持たない会話であった。
しかし、彼女はグラスの赤ワインをくるくると揺さぶる。
「私……父が教育者なんです」
「ん? 学校の先生?」
「はい。今は高校の校長職です」
「え、それなのにこの業界?」
「はい。自由な色が見えたので」
「まぁ、確かに、マニュアルは無いよね。感性の世界だものね」
麻由のつぶらな瞳に長いまつげが被さり、そのままぐっとワインを飲み干す。
そして彼女は、ぽつりと吐いた。
「父は、家でも校長先生だったので」
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東京ショートストーリー ©著者:七斗
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