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2章:花嫁の左手
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ーー麻由の倍近い年齢だった。
私は淀んで、頭の中に瞬時に沸き起こった様々な“疑問符”の羅列を整理するために息を呑み、彼女は薄い笑みを浮かべた。
「坂本さんを驚かせちゃいました?」
「あ……ごめん。正直にはそう。でもね、あなたが幸せであることが一番だから……これも正直に祝福するよ」
麻由は安堵のかけらを眼の端に漂わせ、幾分柔らかな表情を見せる。
「坂本さんなら、そうおっしゃっていただけると思っていました……私、彼の子どもを産みたいんです」
「そっか……愛してるんだね」
「はい。愛しています」
いつか彼女から聞いた『父は家でも校長先生でした』と吐き捨てた言葉がその辺りに木霊(こだま)して、夜の道をゆるゆると伝う。
ーー麻由は、厳格たる校長先生との生育歴の日々をやり直すことを今、無二に愛して甘えさせてくれる歳上の男性に求めたのか。
それとも、自身の運命を賭けて”託した”のだろうか。
その夜も……やはり朧(おぼろ)な月明かりが彼女を包んでいた。
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東京ショートストーリー ©著者:七斗
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