1章:よっちゃんの恋 (18/20)

けれど、おいらって人間を否定されたことだけは許せねぇ……おいらは、しがない貧乏な枯れた職人だけどーー人間なんだぜ？


だから、和香を連れて箱根に行ってくるよ。
いつ行くのか？ 和香は絶対そんなこと取り合わないって？


そこは大丈夫だ。もう手は打ったのさ。箱根のなぁ、高級旅館を予約したんだよ。部屋に露天風呂が付いてんだぜ。おうっ！ 今から行ってくるよ。


ーーロマンスカーで。でへへへ。


ネェちゃん。話を聞いてくれてありがとうな。嬉しかったよ。

お〜い、マスター、勘定だ。
ん、三千円？ 消費税込でか。安いよなぁ。繁盛する訳だ。ごちそうさま！

ああ、そこに置いたボストンバッグが旅行の荷物だ……おっと、よろけちまった。結構重いんだよな。

あ。そうだ。

マスター、ちょっとな、旅行に使わないもん預かっといて。出すからさ。
おお、仕事道具も入ってんだ。多分すぐ取りに来れる……かな？


じゃあ、ネェちゃん、またいつか会おうな。

そんなに好きなのかって？
好き。なぁ……いや、こうなったらもう“もつれて解けない、愛憎の糸”なんだよな。あれ、おいら、気の利いた格言を言っちゃった？

格言じゃないって？ ははは、ネェちゃん、テレビの『Qさま』見たらインテリ軍団に勝つタイプじゃん？


よっこいしょっと。