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16章:薬
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痛みなんか感じる余裕は無かった。
サラは何度も、両手を強い力で叩きつけた。
両手が痺れて感覚がマヒした頃、
叩きつける音で峰が目を覚ました。
「おい!お前何してんだよ。」
サラはその場に座り込んだ。
「虫が、虫がわいた。」
峰はサラの両手を見て言った。
「ばか。切れ目の幻覚だよ。虫なんかいねぇだろ。よく見てみろ」
峰に促され、サラは恐る恐る自分の両手を見た。
………。
サラの両手は赤く腫れて血が滲んでいたが、さっきの青い血管と、黒い点は、どこにも見当たらなかった。もちろんタオルにも。
幻覚だったのか……。
そう気付きホッとした瞬間、激しい痛みを感じた。
「痛い。」
「当たり前だろ。」
どっと疲れたサラは、峰と一緒にベッドに戻ったが、恐怖が消えるまで震え続けた。
本当に幻覚だったのかな。
何か変な病気にかかったのかな。
目をつぶると、足の爪先から何かが上がってくる様な感覚がする。
手で触って確認しても何もない。
しかし、しばらくするとまた何かが上がってくる。
これは幻覚だ幻覚だ幻覚だ………!
峰の身体に抱きつきながら、サラは、とにかく自分にそう言い聞かせ、身体から薬が消えるのを待った。
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