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16章:薬
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アパートの部屋に戻り、テレビをつけると、
今が明け方だという事に気付いた。
昨日の夕方からホテルに入り、一晩別の世界に行っていた。
そんな感覚だった。
サラは、重い身体を引きずり、子猫に餌をやった。
まだ少し薬が残っている様で、可愛い子猫に対して、何の感情もわかなかった。
疲れ切ってベッドに横になった峰は、
勘ぐる元気も無い様子で、特におかしな事も言わず、そのまま眠ってしまった。
サラも、峰の腕枕で瞳を閉じた。
シトシトと雨の音が聞こえる。
車が通るたびに、
水溜まりを叩く様な音が聞こえる。
時計の音が聞こえる。
「うるさくて眠れない」
サラは布団に潜り、ひたすら峰の鼓動だけを聞いていた。
暑い。
寒い。
怖い。
寂しい。
今にも叫びだしそうになる異常な精神状態が落ち着くまで、あとどれくらいだろう。
そんな事を考えていたら、ふと峰の携帯が気になった。
覚醒剤が切れ始めた時の、サラの妄想だ。
峰がどこかに携帯を隠しているはず。
その秘密の携帯で、誰か女と連絡を取り合っている。絶対に捜し当ててやる。
目についたところ、全部調べないと気が済まない。
時折、バイブが響く様な気がする。
冷蔵庫の裏が、ボンヤリ光る時がある。
「妄想」だとわかっていても、サラは堪らずにベッドから起きだした。
冷蔵庫の裏しか見えない。
冷蔵庫の裏が光る。
携帯の液晶の光りだ。
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