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4章:出会い、再会、別れ (9/9)

海人くんは、春人さんの元を去る理由を明かさなかったそうだ。
「じいちゃんばあちゃんのところに行けば、もう会うことはない」と言っても、海人くんは頑なに口を閉ざした。

【頑固なところ、俺に似ちゃいましたね。】

海人くんがいなくなる一ヶ月前、春人さんはあれだけ好きだと言っていた仕事を、辞めてしまった。
楽しみにしていた担任のさくら組の卒園を待たずして、あっさりと辞めてしまった。
売れる物は全て売り払い、銀行の貸金庫に預けた。
海人くんが大人になった時に開けられるような、そういう手続きをしたらしい。

最後の一ヶ月、二人は釣りをしたり、ラジコンで遊んだり、ずっと一緒に過ごした。
今まで忙しい日々を過ごしていた春人さんは、少しでも親子の時間を取り戻すように、片時も離れず、海人くんの傍にいた。

海人くんが家を出る前日。
映画を観に行った。
ドラえもんのスタンドバイミー。

【なんか上手く泣けなかったです。】

という不器用なメールに、わたしの方が号泣してしまった。

春人さんの気持ちを考えたら、涙が止めどなく溢れた。
どんな想いで、あの映画を観たんだろう。
明日旅立つ息子と並んで、一体どんな気持ちで…














そして海人くんは、春人さんの元から、去っていった。
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春 ©著者:柚木

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