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62章:〜契約書〜
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62章:〜契約書〜
人混みで見失いそうになっていた道明寺の後ろ姿を漸くみつけた
りこ「道明寺さん!」
声をかけても
道明寺は振り向かなかった
道明寺の背中を追いかけ
リムジンに乗った。
―やっぱり、聞こえてなかったんだ―
そう思った。
帰り際、
道明寺は口数が行きよりも減った。
気にしすぎだろうか。
疲れているだけだろうか。
運転手と会話している
道明寺の笑顔を見た時に
なんとなく
安心した。
マンションの下にリムジンが到着した時だった。
りこ「運転手さん。道明寺さん今日は、ありがとうございました。」
深目に礼をして
車を降りようとした時に
運転席をみつめたまま
道明寺「気をつけて帰れよ」
棒読みで私に言った一言に
胸が
ギュッと締め付けられそうになった。
目も合わせてくれなかった
運転手が静かにドアを閉め
私は、マンションのエレベーターに乗り
31階のボタンをため息混じりにそっと押した。
後ろをふり向くと
エレベーターの中の鏡にった自分の姿が映った。
アッシュ系の明る目の短い髪の毛に
目にはグレーのカラコン
長めのつけまつげ
ベージュピンクの長いネイルに
シャネルのチェーンバック
さっきの
神田うの風の女性の上品な姿が頭を過り
自分の姿が情けなく見えた。
家の鍵を開け
玄関に入ると
玄関の鏡に
また自分の姿が映った。
その瞬間
一気に嫌気が込み上げた。
私はラビットファーのコートと鍵をソファーに投げるように置いた時に
ふと
―何を比べているだろう?―
そう思うと
涙腺が緩みはじめ
顔が熱くなった。
―自分に自信が無い―
涙で視界が曇りはじめ
私はソファーの下に
膝を曲げ縮こまった。
―自信が無いから
比べたんだ―
自信の無い
自分が
ただ
悔しかった。
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