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15章:陰る先行き
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15章:陰る先行き
41万。今までも何回か掛けはしていたけれど、ここまでのものは初めてだった。伊藤さんは初めて寝た日を含め、2、3回はチップをくれたがそれ以降はくれることは無かった。その上、最近は店に足を運ぶ回数も減り、プライベートな逢瀬を要求してくることが増えた。
何より困ったことが、そろそろ夏季休業が終わってしまうということ。時間的にシフトは今より入れなくなる。稼げなくなる。掛けのみ返すことを考えればなんとかなるかもしれないけれど、あたしはいくらでも光輝に会いたい。
――理恵が居なくなったりしたら生きていけない
――居なくならないで
先日、光輝に言われた言葉が脳裏をよぎる。一緒にいたい気持ちはあたしも同じ。
あたしはキャバをやめることを決めた。そして、今より稼げるであろうヘルスで働くことを決心した。伊藤さんなんかと寝れたんだ。本番なしのヘルスならまだ、いける。
光輝には後ろめたい気持ちでいっぱいだったけど、これも光輝に会うため、と自分に強く言い聞かせた。何より時間の無い状況で掛けを返していかなくちゃいけないし。
そしてあたしは後日、店にその旨を伝えた。
「で、どーしていきなりキャバ辞めることにしたのー?」
あたしと麻衣は今、二人でカラオケにいる。
「んー、なんか営業とかしんどいし。そろそろ学校も始まるしさ」
「でもさぁ、次のバイトも決まってないんでしょ?それにそんなすぐやめたら罰金でるよねー?」
「ぁ、罰金は確かにあるんだけど店長が内緒で減らしてくれるって。それに、もうホント、伊藤さんいやなんだよね…」
「そっかぁー」
ヘルスで働くことは麻衣には黙っておくことにした。さすがに引かれそうだし。これを機に携帯も変えて伊藤さんとか今の客切ってしまおう。どうして仕事を辞めるのかとか聞かれるのも面倒だから。
「麻衣は辞めないの?」
「あたしは罰金払うのいやだしー地味にまだ続けるわー」
麻衣はこのあと用事があるというのであたしたちはそのあとすぐ別れた。
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