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18章:鈴木の憂鬱 (1/10)

18章:鈴木の憂鬱

鈴木拓也、K大学法学部3年
成績優秀、サッカーが得意
趣味は読書とゲーム
親は金持ちだけど、生みの母親とはずっと会っていない。
クラブホステスだった母親は、既婚者の父親との間に出来た俺を産み、一人で育てるつもりだったらしい。
が、父親の妻が子供の産めない体だった事から、義祖父母が、跡取りとして俺を取り上げたらしい。

ちょっと前時代的だが、それ程珍しい話でも無い。

赤ん坊の時に父親の家に引き取られた俺は、実の母親には数回しか会った事は無い。
それもあって、子供の頃は育ての母親が実の母親だと思っていた。

実際、育ての母親はそれ程悪い人じゃ無い。
亭主が浮気して外で作った子供なんて、憎んでも不思議は無いのに、結構可愛がってくれた。
自分が子供を持てない体な事は大きかっただろう。

俺は俺で、自分の生い立ちを知る前も、知った後も、両親に褒められたくて勉強も頑張って、習い事もなかなか優秀だった。

俺は育ての母親に認められて愛されたかったんだ。
不思議に思うだろうが、父親は俺にあまり関心を払わなかった。

俺は父親や、ほとんど会った事さえない産みの母親より、育ての母親を喜ばせたくて、徐々に夫婦仲が冷え切って父親に無視される母親が可哀想で、今だって、俺の母親は、育ててくれた母親だと思っている。

見た目は父親似な俺を、母親は溺愛するようになり、変形母子家庭のような、不思議な関係が成り立っていた。

でもそれで良かった。

なかなか帰宅しない父親に泣かされている母親が、俺が勉強を頑張ったり甘えたりする事で笑ってくれる。

それが嬉しくて、母親の笑顔は俺が守るんだ! なんて思っていた。

そんな関係が壊れたのは、俺が高等部に入った頃だった。


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さよならは星の数 ©著者:奏

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