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5章:枯れる
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私はなんて返事をして良いかわからないまま、ただただ首を横にふる。
松橋『ありがと…』
握っていた手が
私の頭を撫でたあと、自分の方へと引き寄せた。
松橋『こんな大人に騙されたら、ダメですよ』
私『どっちよ…』
私は頭を預けたまま、小さく笑って見上げた。
一瞬にして松橋さんが真顔になり、あいた手で私のほっぺを撫でる。
私は目を閉じて、優しい手の行方を感じる。
クイッと顔を上げられると、久しぶりに松橋さんの唇の感触
放り出された手がバランスを取る為に、松橋さんの太ももの上に移動した時
ほっぺを撫でていた手が首筋にかかり、もう片方の手は私を抱き寄せた。
好き、が止まらないって
こういう事なのかな。
一瞬そう感じたあと、息遣いをどうしたらいいかわからないほどのキスをした。
やめ時がわからないくらいのキス
時々顎に、松橋さんの髭があたりくすぐったい。
濃厚なキスをしたり、おでこをつきあわせて目を見つめ合ったり。
野外らしからぬやり取りだけど、周りのちょっと離れたカップルは私たちを気にしてなんかいない。
スーツの男と金髪の女…。
キスがやむと、私をギューッと抱き締めた。
耳元に唇があたる。
松橋『好きなんです…』
不器用な人…
たぶん、遊んだ事ないんだなって感じがした。
松橋『帰りますか』
返事を聞かずに立ち上がる。
また抱き締められる。
松橋『なんか、明日以降二度と会えない気がしちゃいます』
出来るならそうしたい。
松橋『帰りますかね…』
私は、首を細かくふるふる、っと振った。
松橋さんは目を丸くして、私の手を握って歩き出した。
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重たい扉 ©著者:愛希
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