『んッ？ マルメラ？ってなに』


『マルボロ メンソール ライト。元カレの吸ってた煙草。これ吸うとヤツのこと思い出すんだ、いまだに・・・』


『煙草吸うの教えたの、そのカレだろ？』


『他にも教わったわ、全てのこと。全部よ、ぜーんぶ！解る？ カレはすべてを知ってるの、宇宙の謎のすべてをね』









☆ ☆ ☆


自分の泊まっている、このリゾートホテルのプライベートビーチでデッキチェアーに腰掛け、オレンジジュースのグラスの中で溶け残る氷を、ストローで弄んでいたオレに、先に声を掛けてきたのはアイツの方だった。


『愛せるかもしれない。だけど恋すること、それは絶対に無理なタイプ・・・それがそう、あなたね（笑）！』


アイツはそういいながら、オレの許しも得ないで、隣のチェアーに座って来る。


なんだ、この女⁈



これが、アイツとオレの出会い、そして物語の始まりだった。




ひと夏の恋の始まり？


いやいや新しい人生のページがめくられる？


このアイツとの出会いが自分に何を意味するのか、その時は想像さえつかないオレだった。