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2章:翔
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このおよそ30分間、右隣の男の顔を見てないのだ
下を向くか右を向くか
深く座ったわたしに対し手前に浅く座ってるか
とにかく右隣の男の顔が全く視界に入ってきてない
視界に入るのは後頭部ばかりだ
Mに入ってきた時は恥ずかしいから薫の顔しかほぼ見てない
思い返してもこの男の顔は記憶になかった
意識し始めるとかなり気になる。
てかおかしい…
今さらだけど…
彼はさっきっからわたしも含めたみんなのお酒を作っていた
1番新人らしい
ウェーブ掛かったゆるく無造作な黒髪
柔らかそうだ
彼は浅く座りお酒を作っていた。
手元が見える
氷をいっこいっこ丁寧にグラスに入れると
これまた丁寧に焼酎をグラスに注ぎ
わたしの頼んだアセロラピッチャーを掴み注いだ
マドラーで4〜5回かき混ぜ、ピタとマドラーを止め、氷を止めた
おしぼりでキレイに水滴を拭いている
それが終わると
ふぅ
小さくため息をつき
「どぞ」
と、これまた小さな声で顔と体を右に向けたまま左手でわたしの前にグラスを置いた。
(顔見た〜い)
「お酒ありがとう」
わたしは後ろから彼の両腕を掴み、背中にくっつきながら顔を覗き込んでみた
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