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4章:斉藤の本能
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4章:斉藤の本能
【斉藤圭太】
今通っているカリスマイルボックスでの練習では、僕の心の奥底で眠っている闘争本能を解放することは無理でしょう。
別にカリスマイルボックスでそれなりの練習をしても構わないと言えば構いませんが、今までの僕とは違う豹変した練習風景を見たらジムの会員さん達は引いてしまうだろう。
ジムでは真面目だけれど楽しい斉藤さんで通っているイメージもあるし、家族ぐるみで付き合いのある会員さんも居ますから、カリスマイルボックスで僕が激しい練習をしたら嫁に知らされてしまう。
ただでさえ嫌がっているボクシングなのに、今まで以上に必死に練習していることが知れてしまったら、嫁との溝も確実に広がる。
僕はボクシングで家族を失う訳にはいかないし、失う気なんて当然ない。
オッサンファイトに出場して3年
プロアマ問わずボクシング業界の友人も多数できた。
下手に近くのボクシングジムに掛け持ちで通ったら、意外と狭い業界だから噂はすぐに伝わるだろう。
そこでボクシング業界とは一線を引いていて周りに知れるリスクが少ない、瑞江にある地下格闘技のジムに通うことにしました。
初めて訪れた地下格闘技ジム
会員は刺青が入っている見た目も職人系の人たちがほとんどで、真面目なサラリーマン風にしか見えない僕ははっきり言って場違いだ。
場違いだからこそ僕の周りに知られるリスクがほとんどないとも言える。
月謝は手渡し制の地下格闘技ジム
銀行口座引き落としではないから、別に本名を名乗らなくても全く問題がない。
それでもリスクを最小限に抑える為にも念には念を入れて、ここのジムでは
“樋口陽一郎”
と、名乗ることにした。
別に地下格闘技ジムの会員と馴れ合うつもりもないし、普段なら絶対に接点がない人たちだから必要最低限の挨拶くらいしか話すこともないだろうと思っていたけれど、皆気さくに話しかけてくれて、練習のアドバイスもしっかりしてくれる。
初めは場違いだと感じたけれど、それは僕が彼らに勝手に偏見を持っていただけの話だと、今はとても恥ずかしく思う。
カリスマイルボックスやボクシングジムでは決して味わえない激しくも危険な練習だけれど、今の僕にはこの空間がとても心地いいし自分の中に眠っている闘争本能も徐々に解放されつつあると実感できる。
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ボクサーでホストだった男の詩 ©著者:南月☆Dieち
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