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16章:〜欲情と神格化〜
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『でも、それは無理だ。調べればすぐに判る』
キラが言った。
『うん、私もそう思う、絶対すぐに判るし、それ以前に今更告発しても、どうにもならないんじゃ……』
と私も言う。
『英里子さん、必死なんですよ今。神崎に結婚話しが浮上してるから。神崎も狡い人間です。英里子さん、利用されますきっと』
『利用ですか……』
『ええ、私達がそうだった様にね。尤も、私達はまだ子供だったし、ただ単純に使命感だけで動いてましたけど、英里子さんの場合、彼を離したくなくて必死になってるから、だから余計怖いですよね』
それは言えてる。
あの二人、あの時私にも気づかない程、真剣に何かを話してた。一体何を話してたんだろう。
『神崎さんは英里子さんの所に頻繁に来るんですか?』
キラの言葉に、私は真也の話しを思い出した。
『結構来てるって言ってたよ』
代わりに私が答えると里美が
『真ちゃんでしょ?』
と言ったので思わず頷く。
『内々の話しはしちゃダメって言ってるのに』
と里美が言ったので、私が焦って
『あ、彼から話したんじゃなくて、私が無理に聞き出したんです』
と言った。実際聞いたのは私だ。
『大丈夫ですよ、私何も言いません。あの子も色々気づいてますから』
里美は煙草を水の入った灰皿に落とした。
『でも、神崎の本当の目的は私なんです。神崎が私を告発すると言うのと同じ様に、逆に私が告発するのでは?とも思ってるのかも知れません。私、殺されるかも知れない、時々そう思うんです』
殺される?
『今でも時々、鏡の中の夢を見るんです。ずっとずっと鏡、上も下もね』
洗脳……
ある意味私自身も、そうなのかも知れない。だから、あんな夢を見るのかも。
『俺、洗脳されてたな』
キラが呟いた。
『りぃが言う様に、あのドッペルゲンガーか鏡の住人か判らないけど、きっと神崎さんかも知れない。それに、りぃが見た俺だって、俺みたいな奴なんて何処にでも居るからな』
そう言うと、コーラを一口飲む。
『里美さん、あの人、精神病んでませんか?』
私の質問に、里美は少し考えてから言った。
『神主さんである父親は、時々狐が憑依してパワーを発揮する、なんて言ってるけど、そう考えた方が現実的ですよね』
金儲けの為の神格化。
ある意味神崎もまた、犠牲者なのかも知れない。
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鏡からの使者 ©著者:Jude(ユダ)
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