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10章:〜割れた鏡〜 (12/12)

キラは無表情のまま、ただ機械的に肉を口に運ぶ。神崎はわざと楽しそうにしてるのが判る。

『キラ、何かあったんでしょ?』

私はちぎったパンに料理のソースを染み込ませながら、キラを見る。

すると、キラが低い声で言った。

『俺の部屋の鏡も、同じ様に割れたんだ』

同じ様に?

みんな食べる手を止めてキラを見つめる。

『うん。その日の明け方もおかしな事あったし……』

キラはその夜、提出するレポートの下書きをしていて、いつの間にか机の上に伏せて寝てしまっていた。

どの位そうしていたのか、枕代わりとなっていた腕の痺れで目を覚ました。すると、窓を叩く音が聞こえたので、何だろうと思い、カーテンの隙間から外を覗くと、そこには自分そっくりの男の後ろ姿があった。

しかし、男はそのまま一度も振り返る事無く、普通に何処かへ歩いて行ったのだそうだ。

『間違い無く俺だったんだ。俺が普通に庭を出て、道路を左に歩いて行った。俺は、正体を確かめたくて急いで追い掛けたんだけど、その俺は道端に停めてあった自転車に乗って、そのまま何処かに行ったんだ。

そして昼間、鏡が割れた』

みんな固唾を呑んでキラを見つめる。

『おい、変な事言うなよ……』

ザム迄食べるのを止めてる。

私と神崎は、ただ、押し黙ったまま、あのお祭りの時に見たキラを思い出していた。

もう一人のキラが、まだこの次元に居る。

お祭りの日、私にだけ話してくれた神崎のあの話しを、私は今目の当たりにしてる。あのキラは結局鏡の世界には帰らず、今だ暗躍してるのだ。

その事と鏡が割れた事と、何か繋がりがあるのだろうか?

だとしたら鏡は私の目の前で割れたのだから、私にも何かがある、と言うことになる。

『ねぇ、じゃキラはドッペルゲンガーを見たって事?』

ミュウが恐る恐る聞いた。

『神崎さん、俺だったんです………』

神崎は何も答えなかった。私も答えられない。私も神崎も確かに見ているのだから。

『世の中には科学で割り切れ無い事もあります。でも、恐らくそれは、深い眠りの夢だったと思いますよ。そう考える事が、一番の身の守りとなりますから』

『俺、死ぬんですか?』

すると神崎は穏やかな笑顔で

『いいえ、ピタゴラスも芥川龍之介もちゃんと生きていたじゃないですか』

と言った。
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鏡からの使者 ©著者:Jude(ユダ)

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