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9章:〜リボンのお嬢さん〜
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私はマスターと松永に、一昨日からの体験を話してみた。
『じゃ、その占い師って、自分自身をドッペルゲンガーだと思ってるって事?』
松永にそう聞かれても、どうなんだろう?いや、神埼は交代した、と言っていた。
『交代したらしいんです。だから、彼はもう違うのかと』
と言うと
『でも、鏡の中に居たんでしょ?やっぱりメルヘンだぁ!』
結希は何処迄真面目なのか、良く判らない。
『しかし、僅か二日間でとんでもない体験しちゃったね』
マスターがため息をつく。
『もう何が何だか解らなくて……』
その時、カランカラン♪
と店の扉が開いた。一人の見知らぬ男が、黙って丸いテーブルに着く。
『いらっしゃいませ』
マスターが、お冷やとお絞りを男の目の前に置く。男は、テーブルにあったメニューを黙って指差した。
『畏まりました、キリマンジャロで宜しいですね』
マスターがそう確認すると、男が黙って頷く。
白いシャツに黒いジャケットを羽織ったその男、見掛けは極普通だが、ただぼんやりとしていて、何故か様子がおかしい。
結希が私を突いて、コソコソと言った。
〔あの人おかしくない?〕
〔しぃっ!〕
結局、私の話しは中断となった。松永は腕時計に目を落とすと
『そろそろ戻るかな?後でまたゆっくり続きを聞かせてね』
そう言って立ち上がり、千円札を一枚カウンターに置いた。
『あ、じゃ700円のお返しね』
そうマスターが言ったが
『いや、何時もご馳走になってるから、たまには取ってよ』
と言うと私達に
『試験頑張ってね』
と声を掛けて店を出て言った。
『ねぇ、私達もそろそろ戻らない?』
そう言えば、もう1時間以上此処に居る。
『マスター、また気まぐれで来ます』
と言うと、お互いに300円ずつカウンターに置いた。
『貰っていいの?』
そうマスターが言うと結希が
『勿論!一応お客ですから』
と言った。
『じゃ、遠慮無く。ありがとう、また気まぐれでおいで』
と言ってマスターが笑う。そして、温めたカップにサイフォンで煎れたキリマンを注ぐ。キリマンの独特な酸味が店にいっぱいに広がった。
マスターが、カップをトレンチに載せて、そのお客の前に置く。
私は、店を出ようとドアに手を掛けた。すると今迄ぼんやりしていたその男が言った。
『リボンのお嬢さん』
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