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9章:〜リボンのお嬢さん〜
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私はそのままベッドに崩れ落ちる様に倒れ込むと、重い瞼を閉じる。
一日千秋の思い。
そんな一日だった。もう、何もかもが走馬灯の様に駆け巡り、過ぎてはまた戻り、また、過ぎて行く。
神崎の不可解な話しに始まり、実際に遭った、もう一人のキラ。更衣室のドレッサーに見つけた、光りの点の謎、そして譜面台に現れた、あのキラ。
まるで有能な演出家が構成した舞台の様に、次々と恐怖を掻き立てながら、私を鏡の世界へと誘い込む。
私は誰かに操られてる。マリオネットの様に。
〔やっと気づいたみたいね?
そう、あなたはもう鏡の世界を迷う事無く、歩き始めてるの。
鏡の中のあなたは今迄、ただ宛ての無いラビリンスを、まるで夢遊病者の様に、さ迷い続けて居るだけだった。
でも、あなたにもやっと、道先案内人が到来したの〕
道先案内人?誰?
〔もう判ってるでしょ?〕
もしかして、神埼さん?
〔さぁ、それは知らない〕
その声は、何処かで聞き覚えのある女の声。かなり特徴的な声と話し方ではあったが、どうしても思い出せない。
あなたは誰?
〔え?私の事?〕
その声はとても不思議そうに聞き返す。そして言った。
〔自分の事が判らないの?〕
じゃ、あなたは私って事?あなたは鏡から出て来るつもりなの?
〔さぁね、だって同じ自分じゃない、どっちでも良いでしょ?〕
そう言葉を聞くと、それが自分の意志であるかの様な感覚になってくる。
〔当然よ、同じ自分自身なんだから〕
うん、確かにその通りだ。
〔その内何処かで遭う事になるのかな?〕
え?!それってドッペルゲンガーって事?
〔遭っちゃったらそう言う事になるんじゃない?〕
冗談じゃない!
そう思いたいのだが、何故かその声の言葉は、私自身の意識にも反映され、疑問さえも無い。
やはり、自分自身なのだ。
私はふと妙な事に気づいた。仮に、私を操るのが神埼とするのなら、この声の主の道先案内人も、神埼のあの道化師なのだろうか?
〔あなたが、私の道先案内人を判らないのと同じ、私もあなたについては判らない。でも多分鏡は鏡でしょ〕
そのまま、私の思考はフリーズし、更に深い闇へと墜ちて行った。
やがて、自分では無いが、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
〔…キテ…〕
「…ハヤク…キテ…」
ハヤク…キテ?
『お姉!早く起きて!』
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鏡からの使者 ©著者:Jude(ユダ)
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