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9章:〜リボンのお嬢さん〜
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神崎の様な人物が、この喫茶店の存在を知ったなら、恐らく駆け付けて来そうだ。結希と私は食後の珈琲を飲みに、名前の無いこの喫茶店のドアを開けた。
『いらっしゃい!』
マスターの元気な声が、狭い店内に響く。
『あれ?りぃちゃんに結希ちゃん、どうしたのよ?試験があるんじゃなかったの?』
ふと見ると、そこにはライターをしてる松永の姿も在った。松永は40絡みの独身男性。やはり【不思議倶楽部】の仲間だ。
私と結希は、松永と並んでカウンターに掛ける。
『二人とも珈琲でいいのかな?ブレンド?それともモカ?』
『ブレンド!』
と結希が答えると、松永が
『この時期に悠長にお茶、ってワケじゃないよね?何かあったの?』
『そうなんですよ、松さん!マスターも聞いて下さい!』
結局、結希が話す様だ。
『あのね、りぃが昨日、鏡の人と一緒にドッペルゲンガーの友達と会って、それから、そのドッペルゲンガーがピアノに現れたんですって!鏡の人ってね、鏡からやって来たみたいなんですけど、天国無いって言ったんですって!信じられないでしょ?!』
『???』『???』
『??????』
『あ、ドッペルゲンガーっていうのはね………』
そうだっけ。この♀、話し出したら止まらなくなるんだった。
『でね、ドッペルゲンガーはね、鏡に帰るんですって!何だか素敵ですよね?スッゴくメルヘンチックだと思いません?』
結局、この♀は私の話しをどう聞いていたのか、メルヘンチックに纏め上げてどうするんだ?
『………つまり、あれかい?りぃちゃんが昨日ドッペルゲンガーを見たって事なんだね?』
流石にモノカキ。この支離滅裂な話しで、良くこうもすぐに理解する。
『そうなんです。友達は気づかなかったんですけど、どう見ても、幽体では無いんです』
『………いやぁ…本当にそんな事あるんだねぇ。ピタゴラスだっけ?実際には行って無かった島で、かなり大勢の人にその姿を確認された、なんて話しもあったよね?』
マスターが珈琲を差し出す。
『あ、ありましたね、そんな話し』
ドッペルゲンガーを私が知ったのは、つい昨日の事だったのに、私以外はみんな知っていた。つまり、私が無知だった、と言う事らしい。
『しかし、その鏡の人って誰なの?』
マスターがクッキーを出してくれた。
『占い師さんらしいんです』
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鏡からの使者 ©著者:Jude(ユダ)
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