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3章:〜占い師〜
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もうすっかり暗がりになったステージ裏に、ランプを燈された小さな台が在った。
『お嬢さん、寄って行きませんか?』
目を懲らして良く見ると、半分だけランプの明かりに照らされた、満面の笑みの男の顔が在った。
何時の間に居たのだろう。
確かまだ、リハーサルをしていた明るい時間帯には居なかった筈だ。野外ステージの向こう側には、ステージを楽しむ観客と、チラホラと在る露店のおかげで随分賑やかなのに、何故かこの男の周辺だけ、まるで空気が変わってた。竹林か、雑木林にでも迷い込んだかの様に。
その、半分しか見えない笑顔は、私の体の自由を奪い、何の意志も働かせる事無く徐々に引き寄せた。
『さ、どうぞ掛けて下さい』
何故か言われたままに、椅子に掛ける。
『失礼ですが、あの世の方の存在を、貴女はご存知の様ですね。かなり、強く感じてます。だから、ちょっと寄って頂きたくて。私も同じお仲間ですから』
急にそんな事を言われても、肯定も否定も出来ないし、そもそもそうだからと言って、私の様な人間なんてザラに居る。
『それは違いますよ?貴女の様な方は、そうザラにいませんよ』
何この人………
私は背筋に冷たいモノを感じた。
私は何も言ってないのに、私の考える事がわかる?
『私が解るのは、貴女がお仲間だからですよ。残念ながら、誰でも解るわけじゃありません』
怖い!
『私は何も、危害を貴女に与えるツモりは毛頭ありませんよ。大切なお仲間なんですから』
この時、ストーカーと言う言葉を知っていたなら、真っ先にその言葉が頭を過ぎった筈だが、私はただ、恐怖感に近い戸惑いを感じながら、何とかこの場を立ち去るか、役立つ期待は出来なくても、ミュウの名前を叫びたくなった。
『お友達、どうぞ喚んで下さい。ただ、私が聞ける心の声は、貴女の声だけですけど』
男は相変わらず笑顔を絶やさず、寧ろ今迄よりももっと柔和な笑顔になった。そして私から視線を逸らせると
『あ、喚ばなくても、お友達がみえた様です』
と言った。
男から目が離せ無いまま、体だけは振り返ろうと、何とも奇妙な姿勢になると、後ろから
『り〜ぃ、どうしたん?』
と足音と共にミュウの声が聞こえてきた。
ミュウは、相変わらずのノリで、私と対峙してる男に向かって
『今晩は〜』
とにこやかに挨拶した。
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