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2章:〜暗がりの声〜
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結局、私が練習に参加できたのは、わずか三回だけだった。普段の日は学校もあるし、バイトもあるし、土曜日には不思議倶楽部に参加して、自宅で練習もしなくちゃだし、とにかく忙しかった。
けど、何とか彼等の足を引っ張る事はせず、いよいよ本番を迎えた。
要するに、町おこしの秋のお祭りの前夜祭。明日はここで八木節やカラオケが披露されるであろう仮設ステージでのコンサート。市内の楽器店から機材が運び込まれ、にわかPAも居たのだが、野外と言う事もあってか、とにかく、馬鹿デカイ音を出す事ばかりに専念してた。
まだ、リハーサルの内から、観客が集まり、リハーサルなのか本番なのか判らない状況の中、参加する10チームが、それぞれ簡単な音合わせだけをした。
仮設ステージは、狭くて高くて、高所恐怖症の私には本当に迷惑だった。挙げ句当時のシンセは、大したプログラムも組めない。一番ショックだったのは、せっかく持って行ったフロッピーが使えない事にあった。
『あの、すみませんフロッピー持って来たんですけど』
どう探しても見つからず、黄色いシャツのスタッフに聞いた。するとスタッフは目を真ん丸くして
『え?そんなもの使うの?』
『………』撃沈。
何の為に夜なべしたのか、虚しくなった。
まぁ、いい、なるようになれ!
その時点で、もう私はすっかり冷めた。
取り敢えず、どうにもテンポキープの難しいドラマーにはヘッドフォンでメトロノームを聞いて叩いて貰う事にし、にわかバンドのリハーサルは終了した。
と言っても、本番30分の持ち時間に対して、リハはわずか10分足らず。PAが適当にチェックして終了。
ステージから裏手に下りると、何故かみんなテンションが下がってる。
『どうしたのよ?』
『私、もうダメ〜緊張しまくり〜』
と、ミュウが《らしく無い》事を言い出した。するとキラも
『そ〜いや、何喋りゃ良いんだっけ』
と、ポケットからカンニングペーパーを取り出してる。
トッシュは元々生真面目なのか、譜面と睨めっこを始め、ザムはエアードラムを叩いてる。
そうか、私は小さい時から人前で演奏する事に慣れっ子だったからなんとも思わなかったけど、普通こうなんだ、と逆に感心したが、周囲のグループも、無駄に気合いを入れたりしながら、大変そうだった。
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