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7章:〜それぞれの役目〜
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まだ、教習所に通い始めたばかりの純が、車の運転をして帰った。幸子伯母さん一家も帰った。
良い法事が出来た、と父さんも母さんも喜んでる。さっき迄テーブルにあった祖父ちゃんと祖母ちゃんの位牌が、仏壇に戻された。
祖父ちゃんも祖母ちゃんもきっと喜んでると思う。だから、それは俺も嬉しいけど、でも、スッキリ出来ないモヤモヤが、心の中に沢山あった。
みんなが帰った後の部屋の片付けをしてると、母さんが、祖父ちゃんと祖母ちゃんにお供えした分のお寿司を、二人で分けて食べなさいって言った。
母さんはもう、お墓での事を忘れちゃったみたいだった。
キッチンでお寿司を食べてると、母さんがお茶を入れてくれて、父さんと自分の分の茶を持って出て行った。母さんは何も言わなかった。
でも、さっき純から教わったし、悲しい話しだったから、もう聞きたくなかったし。
だから、俺も透も母さんに聞く事はしなかった。
母さんは、双子だって、俺達が出て来る迄判らなかったんだって。先生にはもしかしたらって言われてたみたいなんだけどね。
父さんと母さんは、ずっと子供が出来なくて、ずっとずっと待ってたから、一度に二人も赤ん坊が生まれて、とても喜んでたって、ずっと祖母ちゃんが言ってた。
祖父ちゃんも祖母ちゃんも、一度に二人も孫が出来て、本当に嬉しかったって。
でも、世の中には喜んで貰えない命があったんだね。純から聞いた話しは、本当にショックだったし、怖くなった。
生命の誕生を知らない訳じゃないけど、でも、純の話してくれた事は、今の俺達には受け止め切れない。
昔々、五体満足じゃないと恥だったって佐藤先生が話してたけど、でも、そうじゃなくても殺されてる命ってあったんだね。
祖母ちゃん、命って何だろう。
そう言えば、祖母ちゃん俺の夢に出て来てない。祖母ちゃん、透だけじゃなくて、俺の所にもきてくれないかな?
『なぁ薫、短冊の人達だって、本当は生きてたかったんだよな、きっとさ』
『うん、お地蔵さんの赤ちゃんだって、観音様の赤ちゃんだって、きっと生まれたかったんだよね』
『この前、祖母ちゃんが夢に出て来た時、俺に言ってたんだ。狐達を守ってって。薫の所に逃げられる様にって。だから、俺は戦うんだ』
『戦う?』
『俺が戦って逃がしてやれって。薫はその狐達を守ってやれって。だから、祖母ちゃんに約束した』
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