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8章:〜約束〜 (7/8)

父さんは、布団をめくって透の胸に耳を当てた。

『母さん、人工呼吸だ!薫、すぐに救急車を喚びなさい!』

母さんは透に心臓マッサージと人工呼吸を始めた。俺はただ、無感情のまま、階段を下りると、119にダイヤルした。

〔はい、こちら消防です。火事ですか?救急ですか?〕

『救急車をお願いします』

俺は、無意識のまま住所を告げてたんだ。そして救急車が来たらしい。

でも、この時の俺はこの家に居ながらにして、この家には居なかったんだ。

俺は、真っ黒な場所にいて、透を探してた。こんなにも真っ黒な場所で、見つかる筈も無いのに、それでも透を探してた。

ずっとずっと。真っ暗の闇を泳ぎながら、透を探し続けたんだ。長い間ずっとずっと。

ずっと泳いでたら、目の前に何かが光ってた。だから、それを目指してみた。

大きな大きな鳥居だった。

見た事も無い程大きな鳥居。

ある程度迄近づくと、もう、泳ぐ必要は無くなった。俺は鳥居に引き寄せられてた。でも、そこに入っちゃったら、もう透を探せ無くなりそうで、だから、今度は引き込まれ無い様にしなくちゃって思って、やっぱり泳ぎ出した。

でも、吸い込まれる力がとても強くて、俺はとうとう鳥居のすぐ傍に来てたんだ。

それでも必死で抵抗したつもりだったんだけど、でも………


〔呆気ないよな〕

ん?誰?

〔透の奴、何だったんだろう〕

透を知ってるの?

〔でも、ずっとお前の中に居るんだよな〕

涙声……泣いてるの?

〔俺、叩いてばかりだったな。お前の事馬鹿だって言ってさ〕

どうして泣いてるの?

〔お前ら見てて、いつも思ってたよ。羨ましいってさ〕

羨ましい?

〔お前らずっと一緒だったじゃん。だから二人一緒じゃなきゃおかしいんだよ……〕

二人一緒……そうだよね。

『なぁ!いい加減目を覚ませよ〜!!!』


此処、何処なんだろう?

あれ?純じゃない、父さんも母さんも………

白いベッドに誰かが寝てる。みんな何してるの?

せっかく寝てる人を何故起こそうとするの?

寝てる?誰が寝てるの?誰を起こしてるの?

俺はその寝顔を覗き込んだ。この人誰だっけ?何処かで逢った事あったのかな?

父さん達、知ってる人?
純も知ってるの?

俺も知ってたっけ?
でも、誰だか思い出せないんだ。それより俺は透探さなくちゃ……ネ。
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君の星・回想録 ©著者:Jude(ユダ)

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