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7章:〜それぞれの役目〜
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夕方、学校帰りに純が来た。
『二人供休んだって聞いたから、どうしちまったのかと思ってさ』
硝子テーブルに並べた二つの狐を見つめなから、純が言った。部屋のドアが開いて、コーラとお菓子を取りに行ってた透が戻って来た。
『しかし、その婆さんって不思議だな……きっとその墓の住人なんだろうな』
純は、透が手渡した缶コーラの蓋を開ける。
この前、純が何故あんなに歎いてたのか、ちょっと気になって聞いてみたくなった。でも、また叩かれそうだから辞めた。
『無縁仏か……何だか悲しい話しだよな。でも、飯盛り女って確かこの辺にも居たらしいぞ』
『え?本当?』『この辺に?』
『あぁ、ちょっと南に行った御厨(みくりや)の八木宿のあの辺り、あの通りって例幣使街道だったろ?宿場があって奉公人が居たんだ』
∞∞∞【例幣使街道】∞∞∞
日光例幣使(栃木県)。日光東照宮の例大祭(4月17日)に金幣(きんぺい)を奉納するために毎年、朝廷から派遣された使者(勅使)の事。このときの往路となった道が例幣使街道。
4月1日に京都を出発し、中山道(なかせんどう)を通って倉賀野宿(現、群馬県高崎市)へ。
倉賀野からが例幣使街で、群馬県太田市、栃木県栃木市などの宿場を経て楡木(現、栃木県鹿沼市)に至り、今市で日光街道に合流する道。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
純は物知り。
俺達は純の話しを聞きながら、時代劇の様な場面を想像してた。貧しくて口減らしの為に、親に売られた子供達って、やっぱりあの短冊の人達と同じ思いだったんだ。
『ほら、八幡(やわた)町にある山辺小の隣に、八幡宮が在るだろ?その隣の小さい鳥居が沢山列んでる、門田神社。あそこ縁切り神社なんだ』
ずっと不思議に思ってた。
なんであんなに鳥居がいっぱいなんだろうって。
ただ、漠然と悲しくなって、胸が熱くなってきて、だから、俺も透もあの道好きになれなかったんだ。
いっぱい悲しい事が詰まってたんだな。
『まぁ、あの神社にいる稲荷って、狐じゃなく狛犬だけどな』
俺には狐とか狛犬とかの意味が良く解らない。でも、鳥居を潜れたその人達は、神様に今でも守られてるのかな。
『お参りしようか』『うんしよう』
『何の縁切りに行くんだ?』
純に言われて思った。
縁切り、何にする?
今は無い、何にも切りたくない。このままで居たい。
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