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6章:〜後悔と無縁仏〜 (8/8)

 お盆でもお彼岸でも無い墓地は閑散としてたけど、でもそんなに広い墓地じゃないし、ブロック塀の外側にはすぐに民家もあった。

お墓の隣の家って怖く無いのかな。なんて少し考えたけど、でも、不思議な事に、俺も透もお墓を怖いと感じた事は一度も無かったんだ。

お墓は、和尚さんがちゃんと供養してるからだと思う。

自分の親戚も居ない墓地に入るのは、少し勇気が要った。他所の家に勝手に上がり込む様な気持ちだった。

お墓はやっぱり何処でも同じで、四角い石に、名前が掘って有って、周りには背の低い囲いがある。

だから、他所の家のお墓と言うのはすぐに判る。

でも、無縁仏のお墓って何処なんだろう。

狭い墓地に足を踏み入れると、小さな観音様が居て、観音様は赤ちゃんを抱いていた。

『ね、これかな?』

『そうなのかな?』

二人でそんな事を相談していたら、何処からともなく、白い着物を着たお婆さんが近づいて来た。

『どうしたんだい?』

お婆さんがそう声を掛けて来たから俺が聞いた。

『あの、これって無縁仏様ですか?』

すると、そのお婆さんは【水子観音】だと教えてくれた。でも、俺達には水子の意味が解らなくてお婆さんに聞いたんだ。

そしたら、お婆さんが丁寧に説明してくれた。

俺達は、二人で一緒にお腹に居て、二人で一緒に生まれて来て、それでも、俺達が大きくて母さん産むのが大変だったって言ってた。

生まれた時は嬉しくて涙が止まらなかったんだって。

でも、世の中には生まれて来られない命が沢山あったんだ。

俺達は、その観音様にも線香を供えて、手を合わせた。手を合わせていたら、赤ちゃんの笑い声が聞こえて来た。

『赤ちゃん、笑ってた』

『喜んでくれたのかな』

すると、後ろでそれを見ていたお婆さんが言った。

『勿論、喜んでるよ』

お婆さんには判るみたいだった。

『無縁仏はこっちだよ』

そう言ってお婆さんが、背中を丸めて後ろに手を組んで歩き出したから、俺達は着いて行ったんだ。

無縁仏は、小さな墓石が幾つも折り重なる様に纏まって建っていた。

すると、そのお婆さんは、後ろ向きのまま言った。

『ありがとうね』

そして、そのまま沢山の小さな墓石の中に、スーッと消えて行った。

俺達はそこにしゃがみ込むと、線香に火を点けて供え、暫く無言で手を合わせていた。
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君の星・回想録 ©著者:Jude(ユダ)

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