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6章:〜後悔と無縁仏〜
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お盆でもお彼岸でも無い墓地は閑散としてたけど、でもそんなに広い墓地じゃないし、ブロック塀の外側にはすぐに民家もあった。
お墓の隣の家って怖く無いのかな。なんて少し考えたけど、でも、不思議な事に、俺も透もお墓を怖いと感じた事は一度も無かったんだ。
お墓は、和尚さんがちゃんと供養してるからだと思う。
自分の親戚も居ない墓地に入るのは、少し勇気が要った。他所の家に勝手に上がり込む様な気持ちだった。
お墓はやっぱり何処でも同じで、四角い石に、名前が掘って有って、周りには背の低い囲いがある。
だから、他所の家のお墓と言うのはすぐに判る。
でも、無縁仏のお墓って何処なんだろう。
狭い墓地に足を踏み入れると、小さな観音様が居て、観音様は赤ちゃんを抱いていた。
『ね、これかな?』
『そうなのかな?』
二人でそんな事を相談していたら、何処からともなく、白い着物を着たお婆さんが近づいて来た。
『どうしたんだい?』
お婆さんがそう声を掛けて来たから俺が聞いた。
『あの、これって無縁仏様ですか?』
すると、そのお婆さんは【水子観音】だと教えてくれた。でも、俺達には水子の意味が解らなくてお婆さんに聞いたんだ。
そしたら、お婆さんが丁寧に説明してくれた。
俺達は、二人で一緒にお腹に居て、二人で一緒に生まれて来て、それでも、俺達が大きくて母さん産むのが大変だったって言ってた。
生まれた時は嬉しくて涙が止まらなかったんだって。
でも、世の中には生まれて来られない命が沢山あったんだ。
俺達は、その観音様にも線香を供えて、手を合わせた。手を合わせていたら、赤ちゃんの笑い声が聞こえて来た。
『赤ちゃん、笑ってた』
『喜んでくれたのかな』
すると、後ろでそれを見ていたお婆さんが言った。
『勿論、喜んでるよ』
お婆さんには判るみたいだった。
『無縁仏はこっちだよ』
そう言ってお婆さんが、背中を丸めて後ろに手を組んで歩き出したから、俺達は着いて行ったんだ。
無縁仏は、小さな墓石が幾つも折り重なる様に纏まって建っていた。
すると、そのお婆さんは、後ろ向きのまま言った。
『ありがとうね』
そして、そのまま沢山の小さな墓石の中に、スーッと消えて行った。
俺達はそこにしゃがみ込むと、線香に火を点けて供え、暫く無言で手を合わせていた。
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君の星・回想録 ©著者:Jude(ユダ)
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