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1章:〜引っ越し!〜 (7/7)

 新しい家に着いた。俺達の部屋にはもう既に、業者が俺達の荷物を部屋に運んでる。母さんは相変わらずあっちの家に残ってるから、今は祖母ちゃんと三人がワンボックスでやって来た。

祖母ちゃんは、建築中、二回くらいしか来て無かったから、出来上がった家を見るのは初めてだった。だから、まずは外側を一周しながら、あちこちに触ったり、キッチンの窓に取り付けられた鉄格子を引っ張ったりして、強度を確かめたり。
挙げ句水道メーターの場所迄確認してる。

俺も透も、そんな祖母ちゃんの姿を目の端に入れながら、ただ漠然と家を眺めてた。

俺も透も、つい一週間前に、完成したこの家を見に来ていた。だから特に目新しさも感じなかったのだが、何故か素直に中に入れずに居る。

感覚が変なのだ。入ってはいけない様な、そんな何とも言えない感覚。

『ね、今日から此処で暮らすんだよね』

俺がそう言うと透も

『うん、そうなんだけどさ』

と言ってる。

『何してるんだい?お父さん中に居るんじゃないの?』

一通り見て周り終えたのか、祖母ちゃんが俺達に声を掛けると、開け放された玄関に入った。

俺達が見ていたのは、家じゃなかった。そこに大きな鳥居が在ったから。でも、実際に在るのは家で、祖母ちゃんが入ったのも家の中。この鳥居ってなんだろう。

『何処に行くんだろう?』

透にも判らないみたいだったが、今やはり同じモノを見てるのだ。

『ずっと先って真っ暗だね』

俺が言うと透が頷く。

『先週迄、こんな事無かったよね?』

と、すぐ後ろで自転車のブレーキの音が聞こえた。

『あ、純!』

二人で同時に言ったからか、純が笑い出す。

『お前ら良く揃うよな』

確かに自分達でも感心する時がある。

『何か手伝う事ないか聞いて来いって母さんに言われてさ』

『多分、無いと思う』

そう透が言った。

『だって俺達も暇なんだもん』

そう俺も言った。

『そっか……今日から近くなったな。もう全部運び切ったの?』

『まだ、あっちに母さん残ってる』

そう俺が言ってると透が

『あれ?』

と呟いた。

家を見てる。俺も見る。消えてる。いつの間にか、鳥居が消えてる。

『無くなった……』

透がポツンと言う。

『うん、無くなった』

俺も確認した。

純が俺達の顔を見て、何かを聞きたそうだったけど、言わなかった。

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君の星・回想録 ©著者:Jude(ユダ)

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