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8章:〜不思議倶楽部〜
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『ま、大学なんてそんなもんさ。俺達だってマグレだった、な?山』
中川が山崎に振る。
『そうそう、奇跡的に卒業したがな』
と笑った。
『じゃ、中さんと山さん、同じ大学だったんですか?』
そう聞くと
『あぁ、松もそうだ。俺達ずっと一緒なんだよ』
と言った。
確か、松永は東大を出たと言ってたのだが。
『おはようございます!まぁ、皆さんもうお集まりだったんですねぇ!』
咲枝ママが、手提げ袋を二つ重たそうに下げてやって来た。早朝だと言うのに、しっかりメイクをし、髪もスッキリと結い上げてる。
『おはよう!朝早くから悪いねぇ!』
マスターがカウンターから声を掛けると、咲枝ママの後から、初めて見る年配の女性が、大きなバスケットをやっぱり二つ持ってやって来た。
その女性にの姿に、マスターがカウンターから出て来て近づくと、中川達と話していた松永も近づいた。
『驚いたなぁ!芳恵さんじゃない!』
そうマスターが言う。
『芳恵さん、もう大丈夫なんですか?』
と松永も言った。
高橋芳恵は松永同様、この不思議倶楽部の創設時からのメンバーで、今年に入って早々に手術をし、暫く顔を出して無かったとの殊。
『すっかりご無沙汰しちゃって、ごめんなさいね』
芳恵は気さくながら、とても品のある印象だった。
『まさか、芳恵さんが来てくれるとは思わなかったなぁ!』
マスターは大感激してる。
『この前私の店にご主人と来て下さったんで、今日の話しをしたら、是非協力させてって言って下さって』
と咲枝ママ。
『あ、そうそう、聡子さんと千鶴さんも、さっき迄一緒だったんだけど、お子さんを送り出さなくちゃいけないからって、皆さんにヨロシクって言ってたわ』
そう芳恵が言った。
この不思議倶楽部、まだまだ色んな人と知り合えそうだ。
『じゃ、みんな揃ったし珈琲をどうぞ』
マスターがカウンターに並べたカップに珈琲を注いだ。
『まぁ!マスターの珈琲なんて本当に久々だわ!』
そう言いながら、芳恵がカウンターの珈琲をみんなに配る。
この小さな喫茶店は只今大入り満員。年齢も立場も、新参者も古くからの人も、そんな壁は何にも無く、此処に居ればみんな友達。
勿論、出窓に居るジョニーとエミーも。
不思議倶楽部は不思議な程、あったかい倶楽部だった。
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